里山のイヌからの手紙

こんにちは。
ぼく、里山の犬です。

いつも、お芋やイリコをごちそうしてくれるおばあさんが、
このあいだ、腰をいためてしまって……
アンズの木を見上げながら、
「今年は収穫できないわ……」と、とってもさびしそうだったんです。


友人のネコもその様子をみていました。

それでぼくたち、話し合ってアンズを収穫して、ジャムを作っておばあさんに届けることにしたんです。


ぼく、アンズの収穫をしているときに、

とても不思議なものを見たんです。

それはね、汗だくで羽をパタパタさせながら、

風を送っているエンゼルでした。

エンゼルが風を送ると、葉っぱがめくれて、

見おとしていたアンズがパッと顔を出すんです。

するとネコが「あっ、ここにもあった!」

「おっ、ここにもあった!」って、大喜びでどんどん収穫したんです。

だけど、不思議なことに猫にはエンゼルが見えていないようでした。

きっとネコパンチに夢中だったんだと思います。


それから、収穫したアンズをコトコト煮て、

おひさま色のジャムができました。

おばあさんの家にこっそり届けながら、

あぁ、あの汗だくのやさしいエンゼルにも

このジャムをあげたかったなぁと、つくづく思ったのです。

来年、アンズのころに、またやってきてくれるなら、

きっときっと、おひさま色のジャムをプレゼントしたいのです。

そして、一緒にイリコティーを飲みながら、

こんどは僕がシュロの葉のうちわで、

エンゼルの羽をパタパタあおいであげたいなぁって思うんです。

                里山のイヌより